恐慌に対する対策として、第二次世界大戦後の各国はケインズの大きな政府論を導入して行きます。
つまり、市場の足りないところを政府が積極的に介入して、有効需要の不足を解消するために公共工事などの財政出動や景気調整を行っていく、修正資本主義、福祉国家という流れのもので、広義の意味での社会主義の一つとも言えます。
しかし、国家機関は効率性がおざなりに なる傾向があるため、機能以上に拡大し、財政赤字が拡大する国々が多発していきます。
そして、民間にできることは民間にを合言葉に、再びスミスへの先祖返りの政策へ、つまり小さな政府へとの方向性が試みられました。
しかし、小さな政府、自由主義に全てを任す、原始資本主義に戻したところで、また以前と同じ問題が生じるしかありません。
実際、イギリスにおけるサッチャー政権においても、不況は改善されず、失業者数はむしろ増加して、財政支出も減少しませんでした。
アメリカにおけるレーガン、ジョージ・ブッシュ政権においても、巨額の貿易赤字・財政赤字の双子の赤字は莫大に膨れ上がり、労働生産性、実質経済成長率の低下、失業率の上昇が見られました。
これらが改善の方向性を示して行くのは、イギリスにおいては、メジャー政権・ブレア政権に見られるエージェンシー制度における様々な指標などによる業績評価・報酬制度、つまり結果的客観的評価システムの導入が見られてからです。
これらにより、一時期 IMF(国際通貨基金) から融資を受けるまで苦境にあり英国病と言われた経済停滞からイギリスは脱することができました。
アメリカにおいては、レーガノミクスが小さな政府を目指したのに対して、逆にその後のクリントン政権では、政府の産業協力を拡大し、雇用の創出、経済競争力の強化など大きな政府を志向して行きました。
クリントノミクスでは、巨額の財政赤字を生み出した張本人こそ市場万能主義的な新自由主義であると考え、アメリカ経済再生への道は、高額所得者への減税や規制緩和ではなく、政府の介入と公共投資の積極的出動によって、変貌する産業構造の要請に合わした労働の質を確保し、社会・経済・技術の基盤の強化を図るというものでした。
但し、それらは従来の大規模な公共投資を経済政策の中心に置くニューディール以降の伝統的なものではなく、 N PR 、GPRA などの業績評価(結果的客観的評価システム)を導入し、ベンチャーキャピタルなどに多額の投資やベンチャー企業の推進に力を入れるものでした。
ベンチャー企業などは後述していきますが、大企業に比べて客観的評価システムのコントロール下に置きやすくもあります。
これらの政策の下、クリントン政権でのアメリカ経済は 非常な繁栄を遂げ、アメリカの財政赤字は劇的な減少を遂げました。
つまり、財政赤字と大きな政府との相関性はないと言えます。
デンマーク、スウェーデンなどの北欧諸国は、大きな政府の代表格ではありますが、財政赤字が低い状態です。シンガポールも同様です。
これらの国々は後述して行きますが、客観的評価システムが他国に比較して、優れている点で共通しています。
資本主義の欠点における恐慌や財政赤字のような問題はそれぞれの国内における客観的評価システムの整備によって解消できることは、アメリカ、イギリスの例や大きな政府でありながら財政が健全である国々の存在を見ればわかります 。
しかし、国外に波及する環境破壊や経済的利益を追求するあまりに起こる国家間の紛争や戦争の問題においては、国内で起きるシステムでは解決できず、国際的組織・システムの問題になります。
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