次にアメリカに移ります。
記事の目次
①市場メカニズム主義・資本主義万能主義の精神から生み出されるマイナス面
イギリス同様カルバン派諸国の特色として、市場メカニズム主義・資本主義万能主義の精神が根付いており、その度合はイギリスをはるかに超えるものがあります。
ロビー活動が著しく、選挙にしても、外交にしても、裁判にしても、全てお金で動くとも言われる状態です。
金銭的利益が客観的評価システムの充実 した整備などにより、社会の利益と密接にリンクされているならそれでも良いかもしれません。
しかし、行政の業績評価である NPR 、GPRA、PARTなどに関してもカルヴァン派諸国であるイギリス同様に、業績評価に重点が置かれる状態というよりも、政府規模を縮小し、市場化を広げる小さな政府を志向する傾向が強く、業績指標のほとんどはプロセス重視で、アウトカムベースではなく、省庁横断的な目標がない状態です。
また、資本主義万能主義の精神から派生して、制限がほとんどされない活発なロビー活動の強い影響下にある議会が、主導権を業績評価を管理する機関に奪われることを嫌うことから、それらの評価結果を重視しないなど不十分なものでした。
条件的客観的評価システムしても、確かに GPA など第3段階目のものに近似した形態なものになっていますが、資格化・技術評価されたものは乏しく、また公的に広域客観的に統一された指標は少なく、 GPA の元になる大学ごとの狭域的指標に留まっています。
これらの指標に全国統一評価試験や公的な介入によって、広域的客観性が加味されれば、修正も可能です。
しかし、アメリカの有名大学はカルバン派プロテスタント教徒のピューリタンが創立した歴史から、私立大学を中心とするため、公的な介入、つまり、安定した民主主義から派生する結果的客観評価システムの作用が届きにくい傾向があります。
そのため、ピューリタン創立の精神も相まって、資本主義万能主義的要素が強くなり、公的教育機関というより、企業化傾向を示すようになったため、各自大学ごとの教育的指標のレベルを超えることができず、全国的な客観的指標としては、極めて利用しにくいものになりやすくなります。
加えて、資本主義万能主義的要素が濃くなるということはグループ主義の介入が生じやすいことを意味し、条件的客観的評価システムの面でも不十分なものになってしまう傾向にあります。
である以上、金銭的利益は社会利益・公益と密接にリンクされていないと言えます。
よって、資本主義万能主義から生じる弊害である投機が横行することからの大恐慌、
大量生産・大量消費により出来る限り金銭的利益を出そうと資源を浪費することからくる資源の枯渇や環境破壊、
大企業が政府や軍部と結託して金銭的利益を第一に追求することからの新植民地主義や軍産複合体の形成から発生する紛争・テロ・戦争などの問題を極めて多く生じやすくなります。
実際パックスアメリカーナの下では、これらの問題は蓄積し、現在の世界危機の主たる要因の一つとなっています。
また、市場化の自由競争による長所も全く制御をかけないと時間の経過とともに、企業が巨大化し、寡占・独占により、自由競争が不活化し、共産主義と実質的には変わらなくなり、経済も当然のことながら停滞します。
②なぜ市場メカニズム主義・資本主義万能主義的思想が占有し続けたのか?
それなのに、なぜ世界の経済的潮流の長期的中心に市場メカニズム主義・資本主義万能主義的思想が占有し続けたのか?
アダムスミスの見えざる手が金銭的利益の追求は社会的利益を導くという説はあくまで仮説であり、それを裏打ちする理論や結果的事実が存在するわけではありません。
結果的事実で言えば、資本主義万能主義が主因となり、帝国主義・新植民地主義・大恐慌・戦争・地球危機的環境破壊などのそれぞれ大問題を生み出している時点で、見えざる手は 見えない通り存在しないか、その仮定された役割を十分に果たしていないことを示しています。
しかし、潮流の主流は変わらない。
何故か?
多数の客観的思考回路が関与していれば、当然のことながら主流の座から離れるはずです。
つまり、資本主義万能主義が世界の主流的思想に位置づけられていることは、人々は考えを委ねて、各自の思考回路をその分野においては休止してしまっている結果と言えます。
全ての考えを教皇に委ねてしまっているカトリックよりはマシであっても、プロテスタントのカルバン派の聖書主義においても、その解釈の仕方を他に委ねてしまうと主観的要素が生じてしまいます。
予定説の一解釈から生じた金銭的蓄財が救済の証という、多数の適正な思考回路のフィルターを通した客観的なものではないものが、真実化されてしまいます。
カルバン派諸国においては、裏打ちのない仮説を真説化してしまい、資本主義万能主義が生み出した強固なグループ主義から歪んだ形で覇権国とそれぞれがなったことによって、他の国々も右倣えの状態により、その仮説が憲法以上に人々の精神的支柱になってしまうことになったのです。
③ではどう対応すべきか?
先ず、一番大事なことは聖書の解釈にしても、他の一般的な事においても、考えを他に委ねて、思考回路を停止させないことが肝要です。
各自、めいめいが聖書の解釈を吟味し、その集合体が通説となるべきで、常にその思考回路を閉じるべきではないと思われます。
次に現実的対応、つまり、アメリカ全体に広がる資本主義万能主義的方向性を大きく根本的に修正するには、その元凶と言うべきロビー活動・回転ドアなどを改革しなければなりません。
政治活動資金は北欧諸国のスウェーデンのように、国庫からの支出を原則とし、企業献金は禁止、個人献金は限度額をシビアに設定した上で、グループ主義的関与がないものに関しては許可するようにしていきます。
回転ドアに関しては、旧来のアメリカの猟官制度的なものではなく、戦後ドイツ型の官僚の身分保障の徹底や休業制度の付与の上、政党会派に属させる形態にします。
また、民主主義から派生する結果的客観的評価システムの質を高めるために、民の政をセレクトする際の選択肢、適切な判断材料・基準の豊富さをオンブズマン制度を介することによって向上させます。
そして、第3段階目の条件的客観的評価システムの資格・技量評価を充実させ、且つ、それをフィードバックするために、基礎票などをイギリスの改革と同様に導入・利用して客観的評価システムの質と量を共に高度に整備することにより、グループ主義の介入や増大を防ぎます。
アメリカの『努力すれば報われる』というアメリカンドリームで表現される要素が生み出す莫大なエネルギーを、資本主義万能主義的方向性で放出させるのではなく、公益に沿った業績評価・基礎票などを利用して、社会利益主義的方向性に放出させることが肝要になります。
それができれば、アメリカは世界の揺るぎない覇権国として復活するのみならず、さまざまな世界危機を吹き飛ばす位の、世界的莫大な公益を生み出すことも決して不可能なことではありません。
では、カルバン派諸国の次はルター派諸国の改革について次回から述べていきます 。