二宮尊徳(金次郎)は江戸時代後期に、破綻しかけた多くの藩・村を改革・復興させた人物です。

『一円観(一円融合)の悟り』は金次郎が初めての改革を担った桜町領の復興事業において反対派筆頭で直属の上司である豊田正作の凄まじい横やり・妨害に心が折れそうになりますが、成田山新勝寺の断食修業の後に悟った考え方です。

「復興事業を妨害する人間は悪人だと思っていたが、そうではない」「反対者には反対の理由があり、反対者が出ることはまだ自分の誠意が足りず、反対させる原因が自分の方にあるのだ」「見渡せば敵も味方もなかりけり、おのれおのれが心にぞある」「打つ心あれば打たるる世の中よ、打たぬ心の打たるるは無し」。「一円観」とは、善悪、強弱、苦楽、禍福、幸災など、世の中のありとあらゆる対立するものを、一つの円の中に入れて観て、相対的に把握する捉え方です。

半円と半円のようにバラバラでは成るものも成らない。互いに合わさって完全なる「一円」となったときに初めて成果が生み出されるというものです。

その後、豊田正作は転じて金次郎の熱心な支援者となります。

簡単に言うと改革をするには、反対者を一方的に敵視・対立してはいけないということです。

わかりやすい例としては、NHKの番組を上げてみます。

南アフリカのギャング同士の壮絶な争いをやめさせようと、牧師が奮闘するドキュメンタリーが放送されていました。

牧師は対立する両サイドの幹部に和平を必死に命を懸けて働きかけますが、その熱意に動かさられた幹部は次々と殺されたり、傷つけられたりされます。

その内情としては、仕事がないために武器や薬を売買することによって生計を立てている者が和平が成立してしまうとその非合法の生業が成立しなくなってしまうことを恐れての行動でした。

そこで、対立してしまうと殺し合いの悪循環が激しくなるだけです。

牧師は和平派に対して決して復讐しないように諭します。

その上で、合法的な仕事である火災探知機の設置や消防活動の訓練などをギャングに提案していきます。

それによって、和平が少しずつ進んでいきます。

逆のわかりやすい例としては、貴乃花の八百長改革があります。

貴乃花の目指した改革は一つの方向性から見ると確かに正しいことだったかもしれません。

八百長がいけないことは小学生でもわかります。

しかし、それが皆が理解しながら、水面下で蔓延る背景を先ずは解決しなければいけなかったような気がします。

ガチンコでやってしまうとケガが続出してしまい、生計が立てられなくなってしまうリスクが極めて高くなってしまうからです。

誰もが貴乃花のように精神・身体ともに強くストイックで相撲道に邁進できるわけではありません。

自分のストイックな方向性を他者にも求めてしまうと、周囲のあらゆる者と対立してしまい、

歴史的に見てもそういう改革は、成功せずに改善どころか事態は争い・対立からむしろ改悪に向かってしまうことが往々にあります。

上記においては二宮尊徳の一円観の考え方を二つの正逆の事象を例に説明させていただきました。

では、現代日本の改革ですが、一丁目一番地と言われることはやはり官僚改革つまり、天下り制度の改革です。

現代日本を中心的に動かしているのは、間違いなく官僚だからです。

しかし、天下り制度が『ダメだ改善しなければ』と長らく言われていますが、なかなか効を得ていません。

なぜでしょうか?

それは彼らを優遇する制度が天下り制度しかないからです。

日本を中心に動かしている官僚組織には日本の中でも最も優れた人材が集められ、そして彼らがその重要な役割に邁進し、能力を十二分に発揮できるインセンティブに富んだ制度が必要不可欠です。

しかし、現在においてはその制度が公益と反比例する天下り制度しかないのです。

望ましき日本国家(=全国民の幸福)のためには優れた官僚組織が不可欠です。

ひとえに官僚批判をしても自らの尻尾を噛んでいるようなもののような気がします。

天下り制度を批判する前に先ずは、公益と比例するような官僚優遇制度を考えるべきではないでしょうか?

次回 官僚こそが最も優遇されるべき存在

 

 

 

 

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