『ワンピース』を読んで、一番印象の残った場面は63巻に掲載されているフィッシャー・タイガーに関する物語です。
フィッシャー・タイガーは、魚人族であり、太陽の海賊団を率いた海賊です。
そして、天竜人に立ち向かい、奴隷解放運動を行なった人物でもあります。
自身も奴隷としての過去を背負い、どうしても消すことのできない人間への憎しみの感情と和解・融和への方向性の狭間での心の葛藤を背負っています。
「おれは!!! 奴隷だった!!!」
「……よく聞け おれは思うままに生き…!!……結果オトヒメ王妃を……ひどく邪魔しちまったが………!!! あの人は……正しい 誰でも平和がいいに決まってる!!!」 「──だが…本当に島を変えられるのは……コアラの様な何も知らねェ“次の世代”だ………!!!」 「──だから頼む!!お前らは島に何も伝えるな!!おれ達に起きた“悲劇”を!!人間達への“怒り”を!!」
「この世にゃァ心の優しい人間達はいっぱいいるんだ!!!そんな事はわかってる!!!」 「なのに…死んで消えゆく者達が!!恨みだけこの世に残すなんて滑稽だろう!!!」 「……頭じゃあわかっていても…!!!おれは もう心の”鬼”が邪魔をする 体が……その血を拒絶する!!!」
「おれはもう…!!! 人間を……!!!愛せねェ………!!!」
この場面を読んでいる時はさすがに目頭が熱くなりました。
人種差別問題においては、なぜか若い頃から関心があり、高校生の頃は友人に黙って独りで『遠い夜明け』(アパルトヘイト下の南アフリカ共和国における実話に基づいた映画作品)を見に行ったりしていました。
歴史人物の中で、最も好きな人物も黒人の公民権運動に尽力したケネディ大統領です。
勝手に愛用の自転車にケネディ号と名付けています。
漫画で涙を流すという行為に少し抵抗があったために、途中で休憩を入れて(ケネディ号で近くのスーパーに買い物をしてから)再読しました。
相手の立場に立って物事を考えるという客観性を確立する作業観点においては、このフィッシャー・タイガーの心の葛藤は非常に現実味のある、深く参考となる内容でもありました。
これが自分がわりとコアなワンピースファンになったきっかけです。
最近は本当に漫画でも、深い趣きのある作品が多くなってきましたね。