⒁国際機関の近現代史を客観的評価システムの観点から考察

次に、国際機関の歴史を遡って、考察して行きます。

①客観的評価システムが機能しない中で構成する規模が最大のために腐敗やグループ主義が蔓延みやすい環境に

世界初の国際機関となったのは、第1次大戦後創立された国際連盟ですが、武力を持たず全員一致の採決を必要とし、アメリカなどの大国が不参加であったために、ほとんどその役割を果たしませんでした。

 

その反省の下、第二次大戦後設立された国際連合では、多数決原理を導入して、有効な議決を可能にし、安全保障理事会の機能を強化し、軍事的制裁も可能にし、アメリカなどの主要大国も参加しました。

しかし、国際連合には、機能する客観的評価システムがほとんどない状態に加えて、構成する規模が最大であるために、腐敗やグループ主義極めて蔓延みやすい環境にありました。

規模が大きい程、悪貨が存在する率が高いため、客観的評価システムの整備が不十分な環境下では、グループ主義がドミノ倒しのように急激に進行しやすくなります。

実際に、20世紀末期に国際連合に対して、創設以来初めて会計監査が行われましたが、その報告書には、国際連合は世界で最も腐敗している機構で、これ程までに日常から詐欺行為が横行している公共団体は他にないと書かれており、当時の事務総長自ら国連職員の約半分が全く役に立っていないと認めている程でした。

国連の予算をどのように配分するか決める国連財政問題諮問委員会 ACABQの予算審議のプロセスは非公開とされ、どの国に対しても伏せられていました。

任期三年であるところ ACABQの委員長職に、その十倍程の期間において同一人物が独占し続けるなど、極めて腐敗・癒着が起きやすく、このような環境は 、特定の国家が国連職員に莫大な賄賂を与えることによって、国連を半分私物化していくリスクを生み出す大きな要因にもなってしまいます。

 

国連の二通りの議決の方法

国連の議決の方法には二通りあり、1⃣国際通貨基金 IMF や安全保障理事会の様に大国が強い議決権を持つケースと2⃣総会のように一国一票制の下、数の多い第三世界の意思反映が強くなるケースがあります。

 

1⃣の代表例である IMF を見て行きます。

議決権は経済規模に応じて定められる出資金の支払い比率に比例して与えられます。

そのため、大国の圧倒的な影響下に置かれるリスクがあります。

資本主義万能論に誘引された新植民地主義に沿った形で、 IMFと連動した世界銀行と共に、発展途上国を支援するのではなく、構造調整プラン等の名の下に、実質的に途上国の経済をさらに崩壊させ、多国籍企業などに莫大な利益を搾取させ、途上国の政府と癒着することによって健全な社会システムを阻害し、腐敗と貧困のスパイラルに陥らせることが常態化し、その流れに合わない途上国のリーダーは失脚させらるリスクなどが極めて高くなります。

 

次に2⃣の代表例である総会により理事国が決定される経済社会理事会を見て行きます。

経済社会理事会は経済及び社会問題全般に対して管轄し、国連の予算と人員の3/4以上はこの分野に振り分けられます。

しかし、一国一票制の為、第三世界ばかりの意思反映となってしまい、分担金負担率の少ない国々に意思反映が偏り、フリーライダー的要素から有効活用しようとする意思が働きにくく、中央統制が乏しく緩やかな監督下のため、様々な活動分野の数十の独立機関がそれぞれ独自の決定の下、折り重なって援助活動し、活動の重複と無駄な縄張り争い、チェック機能などのコントロールの圧倒的不足からの汚職・腐敗の蔓延などから巨額の経費の無駄遣いが発生し、効果的な活動極めて困難な状況となってしまいます。

経済社会理事会下に置かれているユネスコは放漫財政が代名詞となり、数々の国々が唯一有効な牽制手段として、脱退と復帰を繰り返さなければならない状態となっています。

総会の補助機関で途上国の発展・開発を担っている国連開発計画UNDP は予算が膨大で、全世界に 拠点を持ち、裁量の大きい巨費が与えられている状況下で、統制が乏しいのに加え、世界に分散しているためにさらに監視の目が届かないことにより、腐敗の蔓延る国連機関の中でも最大の不正の土壌と言える環境になっています。

 

1⃣のケース、2⃣のケース両方ともに共通して言えることは、客観的評価システムがほとんど整備・機能していない状況下の中、対象規模が世界と最大のため、悪貨が極めて入り込みやすい環境であるということです。

1⃣の場合は新植民地主義的な悪貨2⃣では発展途上国の制度面でも後進的癒着・腐敗体質から由来する悪貨が蔓延り、悪貨であるグループ主義国連組織中に席捲してしまっています。

 

 

③民主主義から派生する結果的客観的評価システム構築する試みがなされている欧州連合 EU

次に、国連と平行して、別の国際機関として存立している欧州連合 EU を考察していきます。

 

国連との大きな違いとして、民主主義から派生する結果的客観的評価システムつまり政権党に対する多くの市民による得票率という評価システム構築する試みがなされています。

政策執行を担う欧州委員会委員長ポストの選出を 、EU 市民の直接選挙である欧州議会議員選挙の結果と関連付ける決定が、リスボン条約で21世紀初頭に締結され、加えて国際機関の中では唯一の市民による直接選挙によって選出される機関であった欧州議会の法的権限も大幅に強化されました。

しかし、そのような動きにかかわらず、欧州議会に対する有権者の EU 市民の関心が薄く、加盟国の国政選挙の投票率は通常60%から90%と高いのに対し、欧州議会の投票率は回を重ねるごとに低下し、1/3近くになりました。

その理由の主要な要素として、 EU の超国家主義的な性格に対して、個別の加盟国の主権が脅かされるという不安が、特に個人所得が高い先進国の国民から起こったことがあります。

その証拠として、第1回欧州議会選挙時の 主に先進国の9カ国の加盟国だけでの投票率は60%以上と比較的高い状態でした。

欧州統合を推進しようとする程、個人所得が高い先進国の国民から欧州懐疑主義が起こり、スイスやアイスランドは正式に EU の加盟を辞退し、イギリスも離脱していきます。

先進国でも世界一莫大な貿易黒字を計上しながら、統一通貨ユーロの導入により、通貨高を免れるという大きな恩恵を得ることができたドイツを除き、高所得国を中心にその流れは加速しています。

その様な状況では、とても民主主義から派生する結果的客観的評価システム構築への進展非常に困難といえます。

結局、国連の様に国際機関として大きな対象規模を持ちながら、客観的評価システムの機能が全く不十分なため、グループ主義という悪貨が多方面から噴出し、それらが主導権を握ることによって、腐敗と詐欺が蔓延する典型的な流れが進行がしていきます。

そのことが、さらに加盟国市民の EU 離れを助長し、 EU 統合を強化するための欧州議会選挙をすればする程、懐疑派だけが議席数を伸ばし、 EU に対する不満による投票率の低下を招くという行き詰まりの状態となり ます 。

 

次回⒂dreamingの本格的作業(総論)

前回⒀シンガポールの近現代史を客観的評価システムの観点から考察

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