プロテスタントにより、貴族制・封建制は崩壊し、、資本主義・民主主義が推し進められていきました。
記事の目次
①資本主義のマイナス面
しかし、プロテスタント国であるオランダやイギリスが海外において植民地支配における原住民に対する搾取や残虐的行為は凄まじいものがありました.
それらは予定説の解釈によって、選民思想的考え方、つまり、野蛮な原住民は神により奴隷になる運命に定められたなどという考え方により行われたと言われています。
また、予定説における救いの証が神から与えられた天職による収益という考え方から発達した資本主義ですが、プラス面もありますがマイナス面もあります。
今、世界的問題となっている環境破壊は正にそのマイナス面の最たるものと思われます。
国内においては、人種的・宗教的寛容が徹底されているのに国外では、正にその逆の対応を原住民に行うというパラドックスが生じていました。
しかし、これはパラドックスでもなんでもなく、当然の理(ことわり)かもしれません。
国内においては、システムや法によって人は縛られますが、国外ではそれは全くなくなることになります。
まだ国際法や国連などの国際組織が全く不整備だった時代です。
規制がない状態では、人は本能、特に集団欲によってグループ主義を特化させていきます。
それに都合よく、予定説が解釈されていくことになったのです。
これを改善していくには、国際法や国際組織など国をまたがる世界的システムの構築を進めていくしかなく、実際的に歴史上もそれを裏付けています。
この問題においては国際組織について考察する時に触れていきます。
原始時代や山奥に点在した集落など集団同士の接触がほとんどない状態で人口が少ない環境では、自給自足が適しているのかもしれません。
しかし、人口が増加して集団同士が密接に交わり合う環境において、貨幣経済が成立せず、自給自足の社会なった場合は、慢性的な食糧危機に喘ぎ、大飢饉・疾病などによって荒廃を極め、食料・資源の欠乏のために、絶えず略奪・紛争が頻発てしまうことは歴史が証明しています。
人口が増加すればするほど、食料・資源が当然多量に必要となります。
各自の非効率な自給自足の自家生産では追いつくわけはなく、役割分担をして、それぞれが分担した生産物を効率的に多量生産して、貨幣経済の下、交易や流通の発達によって、各自に必要な食料・資源が行き届くようにするしかありません。
また市場を無視した狭義の社会主義的な物価統制は、古代においてはローマ帝国時代のディオクレティアヌス帝時代、近代においてはソビエト連邦を例にしても、歴史的に見ると、短期的に成功しても長期的には失敗に帰することは明らかです。
つまり、人口が現代のように莫大になっている以上、貨幣経済とそれが発達してできた資本主義経済は代替えとなるものがない以上、必要不可欠なものと言えます。
また、貨幣などは客観的評価システムの主たる媒介であり、これを欠くことは客観的評価システムの機能も、より優れた代替え物ない以上、極めて低下してしまうことになります。
しかし、それは所詮媒介であり、客観的評価システム自体ではありません。
それを有効に作用させるには、客観的評価システムの質と量に懸かっていると言えます。
客観的評価システムが不十分なほど、資本主義の欠点と言える問題が出て来ます。
恐慌・環境破壊・帝国主義や新植民地主義の流れをくむ紛争や戦争などが主たるものです。
資本主義単体を肯定した スミスの小さな政府論は、利己心こそが経済活動のエネルギーであり、経済を発展させる原動力であり、皆が自由に行動しても、世の中全体として市場メカニズムが働き、調和されるので政府は最低限の夜警国家でいいというものです。
しかし、実際にはそうはならず、投機が横行したり、過剰生産からの恐慌が起きたり、市場のメカニズムを機能不全にする財閥の市場シェアの独占が生じたり、経済の利益を追求するあまりに帝国主義や新植民地主義が激化し、その延長上に国家間の紛争・戦争が勃発しました。
また利益を最優先するため、大量生産・大量消費により資源を浪費し、公害や資源の枯渇などの環境破壊も進行しました。
これらが生じるのは経済利益が必ずしもイコール社会利益、公益ではないため、当然のことと言えます。
②資本主義のマイナス面に対してどうするべきか?
恐慌に対する対策として、各国はケインズの大きな政府論を導入して行きます。
つまり、市場の足りないところを政府が積極的に介入して、有効需要の不足を解消するために公共工事などの財政出動や景気調整を行っていく、修正資本主義、福祉国家という流れのもので、広義の意味での社会主義の一つとも言えます。
しかし、国家機関は効率性がおざなりに なる傾向があるため、機能以上に拡大し、財政赤字が拡大する国々が多発していきます。
そして、民間にできることは民間にを合言葉に、再びスミスへの先祖返りの政策へ、つまり小さな政府へとの方向性が試みられました。
しかし、小さな政府、自由主義に全てを任す、原始資本主義に戻したところで、また以前と同じ問題が生じるしかありません。
実際、イギリスにおけるサッチャー政権においても、不況は改善されず、失業者数はむしろ増加して、財政支出も減少しませんでした。
アメリカにおけるレーガン、ジョージ・ブッシュ政権においても、巨額の貿易赤字・財政赤字の双子の赤字は莫大に膨れ上がり、労働生産性、実質経済成長率の低下、失業率の上昇が見られました。
これらが改善の方向性を示して行くのは、イギリスにおいては、メジャー政権・ブレア政権に見られるエージェンシー制度における様々な指標などによる業績評価・報酬制度、つまり結果的客観的評価システムの導入が見られてからです。
これらにより、一時期 IMF(国際通貨基金) から融資を受けるまで苦境にあり英国病と言われた経済停滞からイギリスは脱することができました。
アメリカにおいては、レーガノミクスが小さな政府を目指したのに対して、逆にその後のクリントン政権では、政府の産業協力を拡大し、雇用の創出、経済競争力の強化など大きな政府を志向して行きました。
クリントノミクスでは、巨額の財政赤字を生み出した張本人こそ市場万能主義的な新自由主義であると考え、アメリカ経済再生への道は、高額所得者への減税や規制緩和ではなく、政府の介入と公共投資の積極的出動によって、変貌する産業構造の要請に合わした労働の質を確保し、社会・経済・技術の基盤の強化を図るというものでした。
但し、それらは従来の大規模な公共投資を経済政策の中心に置くニューディール以降の伝統的なものではなく、 N PR 、GPRA などの業績評価(結果的客観的評価システム)を導入し、ベンチャーキャピタルなどに多額の投資やベンチャー企業の推進に力を入れるものでした。
ベンチャー企業などは後述していきますが、大企業に比べて客観的評価システムのコントロール下に置きやすくもあります。
これらの政策の下、クリントン政権でのアメリカ経済は 非常な繁栄を遂げ、アメリカの財政赤字は劇的な減少を遂げました。
つまり、財政赤字と大きな政府との相関性はないと言えます。
デンマーク、スウェーデンなどの北欧諸国は、大きな政府の代表格ではありますが、財政赤字が低い状態です。シンガポールも同様です。
これらの国々は後述して行きますが、客観的評価システムが他国に比較して、優れている点で共通しています。
資本主義の欠点における恐慌や財政赤字のような問題はそれぞれの国内における客観的評価システムの整備によって解消できることは、アメリカ、イギリスの例や大きな政府でありながら財政が健全である国々の存在を見ればわかります 。
しかし、国外に波及する環境破壊や経済的利益を追求するあまりに起こる国家間の紛争や戦争の問題においては、国内で起きるシステムでは解決できず、国際的組織・システムの問題になります。そのことについても、また後述して行きます。
前回⑺宗教は人類の幸福に関して、どのような作用をしているのか?