英国病を生み出したのは労働組合によるグループ主義でそれを解消させたのが客観的評価システムです。そのことについて考証していきます。(グループ主義と客観的評価システムの関係についての詳細はこちら

第二次世界対戦後のイギリスにおいては、階級格差・教育格差大きく、その中で荒廃した基幹産業を労働党政権は国有化して行きますが、その基幹産業の労働組合が国のインフラを支配して、ストを多発して大幅賃上げをもぎ取り、二桁以上コスト・プッシュインフレを引き起こします。

国民の勤労意欲も内外の投資意欲も減退し、英国病という経済停滞に陥り、1976年には財政破綻し、 IMF(国際通貨基金) から融資を受ける羽目にまでになりました。

選挙権が拡大されることにより、ジェントルマン層のグループ主義)労働組合によるグループ主義)に徐々に移行していき、それらの労働組合はクローズドショップ制により、組合幹部が組合員に対して大きな権力を持ち、ピケッティングや非公式ストなどを繰り返し、非民主的管理状態で、グループ主義追求していきました。

しかも、1981年には労働党党首選において、半分に近い票を組合票と定め、公(おおやけ)の政党をも非民主化したグループ主義が暴走して、勢力下に治めようとしていきます。

そのグループ主義の暴走を止めたのが民主主義から派生した結果的客観的評価システム詳しくはこちらです。

 これらの労働組合に牛耳られた労働党の行う政権に対して、国民の大多数による得票率という評価が低下して、その結果政権を失いました。

労働党に代わり、保守党のサッチャーによる大改革が行われました。

ストを行う場合は組合の投票による決議を必要とし、非公式ストの場合は組合員費の支出は凍結できるように法律を改定し、労働組合の民主化を進めました。

固有企業を民営化し、減税規制緩和を行い、市場原理・利潤原理を取り入れて、経済の再建を目指しました。

しかし、不況は改善されず、失業者数はむしろ増加し、財政支出も減りませんでした。

それは至って当然とも言える結果でした。

アダム・スミスの古典的な理論に戻っただけで、元来、資本主義自体には元々強固な客観的評価システムの作用・機能は有りません。

それを補うために、民主主義から派生した結果的客観的評価システムの作用・機能を包有する政府のコントロール必要とされてきますが、これらが戦後のイギリスのように、非民主的になってしまった労働組合に支配されたり、同様に日本の官僚の暴走によって生み出された、非民主主義的である特別会計の問題などが生じると、民主主義から派生した結果的客観的評価システムのコントロールの作用・機能が正常に働かない状態となってしまいます。

かといって、政府のコントロールを取っても、以前のような資本主義オンリーの、客観的評価システムのほとんど効かない状態逆戻りするだけで、問題は全く解決しません。

大きな政府と言われていても、民主主義から派生した結果的客観的評価システムが正常に機能している北欧諸国や独自の結果的客観的評価システムを適切に作用させているシンガポールにおいては、それらの問題点はほぼ解決されています。

実際、イギリスが英国病から脱出し始めるのは、サッチャー政権ではなく、メジャー政権からでした。

メジャー政権では、数値指標による業績管理という結果的客観的評価システムの導入がなされて行きます。

政策立案以外の執行部門の委託を受けたエージェンシーに対して、契約した結果が出なければ賠償責任を負わせ、出れば結果に合わせて報酬を与える結果的客観的評価システムです。

これによって、先進国中一人当たり GDP が最下位であったイギリスは、過去最長期間における安定成長を続け、上位に返り咲くことになります。

しかし、公共セクターの報酬民間セクターに比べて、上層の職務ほど低くなっており、シンガポールなどと比較して、インセンティブが低く優秀な人材が民間に流れたり、もしくは便宜供与を目的とする民間からの転入などもしばしば見られました。

加えて、製造業などの実業を軽視し、本来裏方であるべき金融業に依存した産業構造の改善も進みませんでした。

物理学などを学ぶ学生がいなくなり、金融機関への就職を目指して学ぶ学生が増え、製造業におけるイギリス人の技能不足がさらに深刻化しました。

それらを補うために、外国人労働者や移民がその人材需要ギャップ埋めるようになりましたが、それに対しても移民反対の動きから EU を離脱するなど諸問題が続出しました。

しかし、昔の超大国として先頭を走ることはなくとも、少なくとも二流・三流国との評価やヨーロッパの病としての立場は完全に脱することには成功しました。

総括して纏めていくと、英国病を生み出したのはグループ主義でその暴走を止めたのが、民主主義から派生した結果的客観的評価システムで、弱ったイギリスを回復させ英国病から脱しさせたのが数値指標による業績管理という結果的客観的評価システムであることが分かります。

 

 

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