民主主義から派生する結果的客観的評価システムとは政権党の政治に対して多数の国民による選挙における支持率という評価と政権を任せるという報酬による結果的客観的評価システムのことです。(客観的評価システムについては詳しくはこちらに)

このシステムの誕生により、対立の暴力による決済に替わる体制内二党制が開始されました

社会において改革しなければいけない事象が生まれた時、それを行うには必ず対立が伴います。

今までの長きに渡る歴史において、対立の暴力による決済がなされてきましたが、それは劇薬であり、副作用が強く、場合によっては、飲む前よりも対立が激化し、社会が荒廃してしまう危険性がありました。

かといって、それを恐れて改善が行われなければ、清流は常に流れなければ腐ってしまうように、社会も沈滞・衰退してしまいます。

それが、内戦・クデーターのような暴力を使わずに、平和裏に体制を大きく変革できるということは極めて画期的なことでした。

民主主義のマイナス面として、先ず金権政治腐敗政治などが挙げられますが、実際にこのシステムを誕生させたウォルポール内閣は総選挙の度に政府機密費を流用して買収・接待に励み、官職を餌に使って、有権者取り込みを図ることも多くありました。

ただ、それらの欠点を差し引いても、民主主義から派生する、政権党の政治に対しての多くの国民による選挙における支持率という結果的客観的評価システムプラス面は大きいものがありました。

しかし、これがない状態民主主義が進んでしまうと、その例として、フランス革命後の共和制ドイツのヴァイマル共和制大日本帝国の憲政の常道期などがありますが、これらは全て衆愚政治を経て、独裁政権に至ってしまっています

フランスでは政治的諸党派が四部五裂して、互いに対立し、安定した政治体制が樹立できなかった状態で、共和制の後 、2度も独裁政権である帝制を経由します。

ドイツのヴァイマル共和政では、大統領の指名のみを基礎とする大統領内閣が継続し、議会政治の空洞化が起き、ヒトラーのナチス独裁に至ります。

日本の憲政の常道期の政党政治では、一度も総選挙の結果に基づいての政権交代はありませんでした

首相を選出する権限元老の意志に委ねられていました。つまり最後の元老と言われた西園寺公望の意思によるものでした。

西園寺ルールでは不可抗力で内閣総辞職に至った場合には、同じ政党から首相が選ばれ、政策に不都合があった場合には、反対党に政権が移るというものです。

このルールにおいては選挙は不要となり、何か問題やスキャンダルがあれば交代のために、政党間の対立攻撃は激化しました。

倒閣を果たした野党が議会の少数派のままで組閣し、与党という有利な条件の下で、総選挙で勝って第一党に躍進するという形式は政権交代の基本形式となりました。

有利な条件というのは、政権交代の度に百人単位で官僚が入れ替わり、自党系の府県知事や警察幹部などが配置され、選挙干渉を行うというものです。

このため、内閣は短命政権でくるくる変わり、民主主義の欠点である金権政治も当然のように蔓延って、国内外問題は山積みなのに、何も解決できない状態が続き、国民の不信感が高まり、軍部独裁へと進んでしまいます。

つまり、結果的客観的評価システムが無ければ、民主主義の欠点、金権政治衆愚政治だけがクローズアップされ、民主主義は行き詰まる傾向にあるということです。評価する内容選択する内容がなければ必然的に衆愚政治にならざる得ないということです。

選挙に行っても、候補者の所属政党の実績、政策、候補者の政治知識、議会でどのような働きを果たしたのかなどが詳しく分からないと、自らの利権に直結する人物に入れるか、主観的なイメージ・人気・知名度なので入れるしかなくなるからです。

かろうじて政権党が行なってきた政治を評価基準に置くことによって、与党系の議員に入れるのか、野党系の議員に入れるのか考慮の上で判断できるのです。

これが日本における地方選挙のように、共産党とそれ以外の相乗り候補の2択状態では、判断基準が全く少なく、そのために投票率も20%台と低く、政治家も政策の勉強をするよりも冠婚葬祭や盆踊り・新年会などに数百回以上顔出すことに励むようになります。

民主主義は何もしなければ、衆愚政治金権政治に極めてなりやすい傾向にあります。

下手をすると国民の信頼を完全に失って、独裁政治へと移行してしまうこともあります。

最低限、政権党の政治に対しての多くの国民による選挙における支持率という評価システムが必要で それによって政治における改善を促すことができるのです 。

アテネやローマでは政権党の政治に対しての多くの国民による選挙における支持率という評価システムがなかったために民主主義が失敗し、帝制や王政つまり独裁に至ったということです。

では政権党の政治に対して多数の国民による選挙における支持率という評価と政権を任せる報酬というシステムは、二大政党制における責任内閣制のみ当て嵌まるまるものなのでしょうか?

いえ、例えばスカンジナビア諸国の政党布置形態は北欧五党制と呼ばれる比例代表制の選挙に基づく議会制民主政治が機能していますが、その政党布置の変化が少なく、安定した議会政治が展開され、左派と中道右派に分かれ、両者の勢力のバランスによって政権の行方が決まるブロック政治の慣行があります。

これらも実質、二大政党制と同じような、二大ブロック制なるものの形態になるため、当然このシステムに当て嵌まります

半大統領制も議会の過半数の支持により成立する首相と内閣があるために、同様に当て嵌まります

問題はアメリカ型の大統領制ですが、実際これがうまく機能しているのが、アメリカがほとんど唯一の例と評されることもあるほど、導入した国々は政治停滞や軍事クーデターの問題に直面しています。

しかし、アメリカは二大政党制が確立しているため、大統領は二大政党出身となり、ワイマール共和制下のヒンデンブルク大統領のように無所属ということがなく、政党と大統領の繋がりがあるため大統領の実施した政治内容によって、次の中間選挙などにも影響してきます。

またアメリカは高級官僚が政治利用され、政権が代わると日本で局長クラス以上の地位に当たる約三千のポストが登用され、前政権の官僚と交代します。

主にシンクタンク、大学、財界からの登用が多いですが、シンクタンクでも民主党系、共和党系という系列があります。

アメリカにおける大統領と政党は緩やかではありますが、それでいて密接に繋がっているのです。

また大統領選挙が政党の予備選挙も含めて極めて長期間において実施されるため、主観的で一時期的な人気やポピュリズムなどに流されにくい傾向があります。アメリカ大統領の選挙の画像

その他、シンガポールにおける、人民行動党の一党独裁で極めて変化しにくい体制であっても、政権党の政治内容を多数の国民が評価した支持率の上下によって、政権党の政治内容の改善が可能であることから、平和裏で政権が交代するという大きな改善は望めにくいために効果半減しますが、このシステムが不完全ながら、機能していると言えます。

その点では、政策実施を直接担う高級官僚大幅に交代させるアメリカの制度は、昔ながらの猟官性のマイナス面を含みはしますが、平和裏に大きく改善することを可能にする機能としては大きな効果があります。

また、財界出身はともかくとして、非営利団体のシンクタンク出身の任用は、猟官制度の癒着などの要素を薄める作用も果たしています。

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