中小企業と大企業・財閥どちらを重視すべきか?

B!

資本主義下で、民主国家(民主主義から派生する結果的客観的評価システムを伴う)がコントロールする経済においては、

資本主義万能主義的に自然の流れに任す大企業や財閥の支配する形態を目指すべきなのか?

政府の関与・支援の下、中小企業やベンチャー企業を中心に活躍できる形態を目指すべきなのか?

客観的評価システムの観点を通して考察していきます。

大企業や財閥はそれらが形成される、初期的成長期の短期間においては経済発展の牽引役として機能しますが、それ自体は公益に沿った客観的評価システムとリンクしていない為、必然的にグループ主義を追及していき、政官財のトライアングルのよる腐敗を蔓延させ、市場を独占・寡占し、財閥支配が強い韓国の様に、中小企業を圧迫し、自由競争や創業が阻害され、起業家精神が失われてしまいます。

これらの現象は多かれ少なかれ、財閥色の度合によってどの国、時代にも見ることができ、日本の戦前やアメリカの金ぴか時代などにも強く現れています。

一度、これらのトライアングルのグループ主義が形成されると制御されるのが非常に難しく、財閥や多国籍企業が引き起こす帝国主義もしくは新植民地主義における紛争や戦争、不況や恐慌全般を引き起こす行き過ぎた投機の横行(銀行と証券の分離を規定したグラス・スティーガル法を廃止した途端に、1929年の世界大恐慌以来の世界大恐慌として勃発したリーマンショックを見ても分かる様に)、大量生産・消費が引き起こす環境破壊などあらゆる資本主義の欠点ともいえる諸問題が続発します。

中小企業は資金的、研究開発等技術的な面で政府の支援なしに海外と競合していくのが非常に難しい状態にある為、これを敢えて幸いとして、国の関与つまり公益とリンクした客観的評価システムのコントロールを効かせることが支援する条件・調整等によって可能となります。

勿論、国・政府等にどれだけの質・量共に整備された客観的評価システムが備わっているかによって効果はかなり変わってきますが、公(おおやけ)のコントロールが全くないよりはましといえます。

また小さな組織の方が公(おおやけ)を侵すグループ主義を生じにくいという利点もあります。

組織というものは、社会生活分野、経済活動分野、どの分野においても大きくなればなる程、悪貨が混入しやすくなり、客観的評価システムの介入がなければ、悪貨が良貨を駆逐するという流れにより、グループ主義・癒着・不正が蔓延るようになります。

社会生活分野の組織であるユダヤ民族や客家の共同体にしても、離散、ディアスポラの状態やキブツのような少数集団の形成などの、それぞれミクロレベルの影響力しか及ぼさない場合であれば、高教育を受けた優秀な人材を供給するなど公益に沿った機能を果たしますが、マクロレベルに進展すると、共産主義のような公益を大きく損なう作用に転化してしまいます。

経済活動分野 である企業にしても、中小企業レベルにおいては自由競争・科学技術のイノベーションなどによる公益に沿った働きをしますが、大企業レベルになると強固で巨大な政財官の トライアングルのクループ主義が形成され、軍産複合体や財閥が引き起こす帝国主義・新植民地主義における戦争や紛争など公益にとってマイナスの要素が大きくなります。

他の分野、例えばスポーツ関連団体にしても、小さな団体においては余り不正やグループ主義的問題は発生しなくても、大きくなればなる程、国際的にはオリンピック協会、日本国内においてもいくつかの協会から、過去から現在に至るまで 様々なグループ主義的な歪みが生じていることは皆さんもご承知のことだと思います。

組織である以上、大きくなればなる程、客観的評価システムの介入がないと、グループ主義的問題が発生するのは必然といえます。

しかし、公的組織と違い、民間組織おいては、安定した民主主義から派生する結果的客観的評価システムを直接的効かせることは困難であることや基本的人権における自由権の問題などから、客観的評価システムの充実性という観点では、民間組織は公的組織よりもどうしても劣ってしまうことになります。

よって、公的行政機関が民間組織に対して実施する政策の方向性の主たるものとして、小組織に対しては支援バックアップするのに対し、大組織に対しては一定の制限をかけていくことにより、大組織支配的抑圧影響力持たず小組織中心的活躍できる環境を整えていくことになります。

もちろん、それと並行して、極力客観的評価システム機能させることも重要となります。

第二次世界対戦後、1950年代までは世界経済の中でアメリカ一人勝ちな状況でした。

しかし、徐々にアメリカ製品が他の国々の製品との競争に押され始めます 。

1970年代にはアメリカ製品の輸出が頭打ちになり、逆に他国からの輸入が増加したため、南北戦争を克服して工業化に成功し、黒字に転じてから100年ぶりに貿易収支が赤字に転じます

1980年代からは莫大な財政赤字と貿易赤字が併存した双子の赤字の状態に陥ります。

アメリカ製品が押され始めた理由、つまり貿易収支が100年ぶりに赤字に転じてしまった原因は、カルヴァン派のマイナスの要素、資本主義万能主義・自由放任主義の方向性です。

資本主義経済に対して、自由放任的対応すると、自然な流れで大企業を中心とした成熟した寡占体制となり、徐々に競争力が失われてしまいます。

寡占度を高めた基幹産業におけるマークアップ・プライシングによる価格設定インフレを高め、さらに対外競争力が低下し、アメリカ製品が売れず、当然のことながら景気が沈滞し、スタグフレーションを引き起こします。

景気回復のための従来的な需要増加を目的としたケインズ政策的財政出動も、北欧のように腐敗指数が最良の順位で民主主義から派生する結果的客観的評価システム機能が十分働いている政府下で行われるのならともかく、政治資金制度がほぼ自由放任でマネーゲーム化した民主主義下腐敗指数が先進国中最悪とも言える順位であるアメリカの政府による財政出動は効果的な作用を及ぼしませんでした。

供給力を強化することを主としたサプライサイド経済学的な政策も、非現実的なセイの法則が成立する必要があり、その法則が成立するのは極めて限定的なものでした。

マネタリスト的な金融緩和も、短期的視点で言えば効果はあっても、カンフル剤や対症療法的なもので、根本療法的なものでないため、長期的視点で見ると、逆に反動によるリーマンショックなどの大きな恐慌を呼び込むことになってしまいます。

自由放任的な政治資金規制下での腐敗指数が悪い政府下でのケインズ政策が不十分もしくはマイナスの要素の結果的客観的評価システムが効いた状態とすれば、反ケインズ的・小さな政府を指向するマネタリズムやサプライド経済学的な政策は結果的客観的評価システム自体の作用を極めて少なくすることを意味します。

大事なことは質・量ともに充実・整備された客観的評価システムを実施することなのに、質の悪い結果的客観的評価システムを取る、はたまた結果的客観的評価システムがほとんど効かない状態を取るに議論は終始してしまっています

従来通りのケインズ政策を選択したカーター政権も自由放任主義・小さな政府を指向したアダム・スミス的先祖返りの政策を選択したレーガン、ブッシュ政権も当然のことながら両方とも失敗します

レーガン、ブッシュ政権に至っては莫大な財政赤字を含む双子の赤字状態になります。

莫大な財政赤字の主たる原因は、アイゼンハワー政権に遡って、考察する必要性があります。

戦後、しばらくは建前と一致する民主化の普及外交であったのが、アイゼンハワー政権においてダレス兄弟が影響力を持つことによって、方向性は一変します。

アイゼンハワー自体、軍人一筋の人であり、政治にはあまり通じていない中、クライアントである多国籍企業のための政策を政府に働きかける役割をしていたダレス兄弟が国務長官と CIA 長官という外交上の最も重要な地位につくということは、アメリカの外交政策が国益よりも多国籍企業の利益を優先する方向性に傾くリスクが極めて高くなることを意味します。

 実際的に多国籍企業が一人勝ちする、資本主義放任主義から生まれた帝国主義を彷彿とさせる新植民地主義的政策にシフトチェンジして行きます。

当然、戦前イギリスを筆頭とする帝国主義に邁進する西欧列強国が短期的には利益を吸い上げたにせよ、長期的には原住民や他の列強との対立・紛争の図式によって、逆に莫大な費用や損失が計上され、国力が加速度的に落ちたように、アメリカもソ連との冷戦、ベトナム戦争、アフガニスタン紛争、イラク戦争その他多くの国々への軍事介入などによる莫大な、世界の総軍事費の1/3に至るほどの軍事費用が重くのしかかり、自然な流れで莫大財政赤字に陥ります。

つまり、イギリスが軍事費などの同様の要因により覇権国の座から滑り落ちたように、アメリカも世界一の超大国としての立場を大きく揺るがすことになります。

アイゼンハワー政権のように、レーガン、ブッシュ政権においても、同様の状態が続きます。

しかし、この莫大な財政赤字黒字転換させる政権がアメリカに現れます。

それがクリントン政権です。

クリントン政権では、それまでの共和党政権の小さな政府を指向することでもなく、ニューディール以降の民主党の伝統的なケインズ政策を実施したわけでもありません

NPR 、国家業績評価という結果的客観的評価システムの一種を導入して、国家改造を行う過程において様々な政策、財政出動をして行きます。

比較的大きな政府の中、政府が民間の経済活動に積極的に関わり、雇用の創出をしていくという点では伝統的なケインズ政策とはほぼ変わりません。

しかし、そこに結果的客観的評価システムを直接効かせるか、そうでないかによって両者は大きく異なっています

NPR によって行政職員の意識は大きく変化し、目的を明確にし、業績測定などにより、インセンティブと行うサービスに対する説明責任を持ち、自発的な行動が見られるようになります。

その実施過程の中、ベンチャー企業支援や IT 産業発展の環境整備、次世代自動車開発などに補助金や軍が蓄積してきたハイテク技術を投入するなど、民間の経済活動への政府の介入に慎重だった共和党政権に対して、クリントン政権は政府の産業介入を鮮明にし、自由放任主義の方向性を大きく方向転換しながら、昔ながらのケインズ政策のように需要増加ありきのものではなく、明確な目的の下、実効性・効率性を重視した政策を進めて行きます。

その結果、アメリカ経済はアメリカ史上最長の景気拡大・株価上昇を記録し、失業率もインフレ率も低下し、30年近く続いていた政府の財政赤字もクリントン政権末期には解消されました

ジャーナリズムはこの繁栄の下のアメリカ経済をニューエコノミーと名付けます。

この言葉はベトナム戦争以降の長い経済・社会の停滞・低迷を脱し、自信を取り戻した人々の心に刻まれました。

その背景には IT 革命に代表される技術革新の進展により、アメリカ経済の体質が変わり、強いアメリカ経済復活したという認識にありました。

 

総括すると、資本主義のみ追求して行くと、国内においては、大企業による寡占・独占が進行し、競争阻害され、半分共産主義と実質的には変わらなくなってしまいます。

国外においては資本主義は常に市場を拡大し続けるため、戦前においては帝国主義、戦後においては新植民地主義が広がり、紛争・戦争を引き起こします。

 

資本主義の最大の利点である自由競争生かし最大の欠点である戦争・紛争・環境破壊・恐慌などを防ぐにはどうしても公(おおやけ)のコントロール 必要不可欠です。

しかし、その公(おおやけ)のコントロールがどの程度、的確に整備された客観的評価システム下に置かれているかによって効用の度合いも大きく変わって来ます。

 

ただ、コントロール自体がないと、先ず、自然の流れで、時間が経るにつれて、財閥・巨大企業イニシアチブを取るようになってしまいます。

取るまでは経済・社会は発展しますが、彼らが主導権を握ると状況が一変します。

自由競争は阻害され、癒着が蔓延り、新しい技術のイノベーションもされにくくなります。

20世紀後半時に同じアジアでNIES と言われた韓国と台湾に焦点を当ててみるとよくわかります。

韓国財閥王国台湾中小企業王国と言われ、対照的な経済体制を取っていますが、初期においては両国とも急成長していきます。

韓国も漢江の奇跡と言われるほど経済成長していきます。

しかし、その時期は財閥自身、形成途上の中、成長のエンジンとしての役割を果たしますが、形成が なされ、経済支配するようになると、国内市場を寡占化したり、技術を持った有望な中小企業を潰していくなど、資本主義の最大の利点である活発な自由競争阻害して行きます。

経済成長を実現する上で、非常に重要なものがイノベーションですが、イノベーションには革新的なものと改良的なものがあります。

革新的なイノベーションは、従来の製品や技術とは根本的に異なる物やサービスを生み出すもので、改良型は既存の技術を改良してより低コストで生産し、品質を改善するというものです。

一般的に大企業改良型のイノベーションに優れ、中小企業の方が革新型のイノベーションに優れています。

大企業はすでにビジネスで優位な立場にあり、自分の市場を守らなくてはならないため、自らのビジネスを伸ばすような改良型技術に資本を投ずるインセンティブを強く持っています。

しかし、自らの従来のビジネスを破壊するかもしれない革新的技術に資本を投ずる意欲は弱くなります。

後発のベンチャーや中小企業にとっては、守るべき市場がないため、革新的なビジネスに集中し、巨額の利益を確保する可能性に賭けた方が合理的とも言えます。

海外をキャッチアップする段階の時は、改良型のイノベーションが中心であっても、高い経済成長をあげることができます。

キャッチアップだからこそ、改良型イノベーションの機会が多くあるといえるからです。

しかし、世界経済のフロンティアに近い所まで辿り着いくと、革新型のイノベーションなしで、経済全体のパフォーマンスを上げることは非常に難しくなります。

実際、韓国は先進国的地位に着いてから、通貨危機など経済破綻繰り返しています。

また、昔の財閥支配が著しかった戦前の日本のように、政・官・財のグループ主義による腐敗激しく、歴代の大統領は失職するとほとんどがその後、訴追されるという現象も生み出してしまっています。

 

自然科学分野のノーベル賞企業家精神密接な関係があると言われています。

実際、各分野で多くの受賞者が企業の創業者や理事、研究員といった形で、研究成果の事業化に取り組まれています。

 

しかし、韓国における自然科学分野のノーベル賞皆無であり、財閥重視の形態が既存の技術を改良したり、コストダウンすることができても、新しい技術開発することが難しいことを表しています。

 

対して、中小企業王国起業家精神旺盛な台湾においては、韓国に比べて人口が半分に満たないのに、自然科学のノーベル賞受賞者を韓国に先駆けて、輩出しています。

台湾においては中小企業を育成するために、政府が様々な面で大きく関与し、政府系研究機関からスピンオフという形で多くのベンチャー企業生まれています。

 

市場が正常に機能するための基本的な仕組みである独占禁止法や公正取引委員会はもちろんとして、ベンチャー企業などの中小企業が海外で国際競争力を持って活躍するには、政府系機関バックアップ必要不可欠となります。

 

アメリカは合衆国史の初期段階から、政府が経済に介入するのを避け、自由放任主義原理としてきましたが、19世紀後半における金ぴか時代を経て、大企業の影響力が増大し、地方自治体の政府が腐敗した政治家に支配される例が多く見られるようになると、進歩主義という改革運動が発生します。

 

当時、腐敗した大企業と結託し、泥棒男爵と呼ばれた政界のボスによる不正行為などの行き過ぎた資本主義政治腐敗に対して、世界の独禁法の起源となるシャーマン法クレイトン法などが制定され、その他事業規制や乱開発などの環境破壊に対する自然保護政策などが採られるようになります。

1890年から1920年にかけてのこれらの時代は進歩主義の時代と言われています。

 

しかし、進歩主義の時代から狂騒の20年代と呼ばれる時代に入ると、保守的な共和党政権が3期続き、3期ともに自由放任経済政策を実施し、政府は大企業との密接な関係を固めて行きます。

企業統合が相次ぎ、巨大企業が続々と誕生し、大量生産が供給されますが、グループ主義形成による富の偏在により、一方で過剰ストックによる過剰投資、もう一方で富が行き渡らない層における過少消費もしくは債務や極端に上昇した株価など投機に裏打ちされた消費とのギャップにより、必然的にある一定の閾値を超えた時点で株価が暴落し、それに合わせて債務上昇、消費・需要が急激に加速度的に減少する恐慌勃発します。

この恐慌は20世紀最大の世界大恐慌発展し、第二次世界対戦大きな要因にもなります。

 

戦後、ケインズ政策行き詰まり、レーガン、ブッシュ政権による自由放任主義政策がまたもや採られましたが、莫大な双子の赤字を生み出し、失敗に終わります。

 

その後のクリントン政権におけるニューエコノミーの時代においては 、NPR の下、ベンチャー企業・中小企業に SBIR などの研究開発支援政策が推進され、中小企業アメリカ経済リードして行きます。

ベンチャー企業における研究開発は、巨大企業に比べて3~5倍もの特許を生み 、GDP において1%にはるかに満たない資金で20%以上の価値を生み、民間の雇用においても10%以上を生み出して行きます。

ニューエコノミー時代以前の過去20年間の労働生産性成長率に比べて、ニューエコノミーにおける成長率は3%と倍以上にも上昇しています。

 

しかし、クリントン政権時の議会が上下両院とも共和党多数になると自由放任主義圧力が強くなり、共和党員によって提出され、上下両院ともに賛成多数で可決されたグラス・スティーガル法廃止法案通りました

グラス・スティーガル法は、大恐慌後にその再発を防止する役割を果たしてきた銀行と証券を分離する金融規制です。

この廃止によって、恐慌の発生リスクが極めて高くなります。

その後のブッシュJr政権においては、共和党政権としての特徴である小さな政府・自由放任主義政策がやはり実施され、軍需産業を中心とする財界と繋がりが極めて強い典型的な状態となり、クリントン政権時財政黒字であったものが、当時において史上最大財政赤字に転じてしまい、第二次世界大恐慌とも言われるリーマン・ショックを必然的に引き起こしました。

これら対策としての公的行政機関が組織に対して実施する政策の方向性については別記事(クリックしてください)で詳しく考察しています。

労働生産性が中小企業よりも大企業の方が一般的に高い為、中小企業よりも大企業を重視すべきという意見もあります。

しかし、労働生産性が中小企業よりも大企業の方が高いことは、大企業の中小企業に対する搾取的経済活動(丸投げによる莫大なマージン、下請け支配など)が主な要因でそれを無視して、中小企業よりも大企業を重視すべきと考えることは「木を見て森を見ず」と言えます。

実際的に大企業重視のニューエコノミー時代以前の過去20年間の労働生産性成長率に比べて、中小企業を重視したニューエコノミーにおける成長率は3%と倍以上にも上昇しています。

よって、やはり大企業よりも中小企業を重視すべきであると思われます。

 

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