財政赤字は大きな政府・福祉国家などが原因とする考え方は、資本主義万能・自由放任主義・小さな政府を最良とする『国富論』著者のアダム・スミス以来の考え方です。
今、現在においてもこの考え方は強く根付いているのではないでしょうか?
しかし、イギリスにおけるサッチャーの大改革では、固有企業を民営化し、減税や規制緩和を行い、市場原理・利潤原理を取り入れて、経済の再建を目指しましたが、不況は改善されず、失業者数はむしろ増加し、財政支出も減りませんでした。(詳しくはこちらをクリック)
同様に、アメリカにおいては、自由放任主義・小さな政府を指向したアダム・スミス的先祖返りの政策を選択したレーガン、ブッシュ政権も莫大な財政赤字と貿易赤字が併存した双子の赤字に苦しみます。(詳しくはこちらをクリック)
両国とも、これらの苦境に対して改善の印を示すようになったのは、数値指標による業績管理という結果的客観的評価システムの導入がなされてからです。(イギリスはエージェンシー制度、アメリカはNPR 、国家業績評価)
また、大きな政府と言われていても、民主主義から派生した結果的客観的評価システムが正常に機能している北欧諸国では財政赤字の比率は他国と比べると極めて少ないものとなっています。(詳しくはこちら)
財政赤字の問題解決を考えるにあたって、先ず、ピックアップすべきことは公務員数の多さや大きな政府・小さな政府ではなく、フィードバック的改善作用を持つ結果的客観的評価システムがどれだけ正常に適切に質・量(種類)ともに機能しているかという点にあると思います。
保険制度や年金制度が整備されている日本は大きな政府・福祉国家であると一応いえると思われます。
一般的に大きな政府・福祉国家は財政赤字を生みやすいといわれています。
実際的に日本は世界最大の政府債務残高(対GDP比)を保有してしまっています。
しかし、日本以上に福祉国家であり、大きな政府である北欧諸国の政府債務残高(対GDP比)では日本の四分の一以下で、腐敗認識指数・国際競争力も世界最良位レベルを諸国それぞれが保っています。
この日本と北欧諸国の大きな差を生み出した原因は、民主主義から派生する結果的客観的評価システムの機能の度合にあります。
選挙においては、日本では候補者の名前を連呼
政治主導による政策の実行で政策党の公約の七割から八割は北欧諸国のスゥエーデンでは実行されていきます。
抽象的な公約しか掲げられず、余り守られない日本とは対照的です。
また、投票率も、定員に対する立候補者数も圧倒的にスゥエーデンは日本を上回っています。
民主主義から派生する政権党の政治に対して多数の国民による選挙における得票率という評価と政権を任せるという報酬という結果的客観的評価システムでは、他の野党との対比や選択肢の豊富さがその機能の充実度に直結しています。
マニュフェスト等により具体的な公約が示され、過去実績において七、八割実行されていることは、政権を任されていない野党であっても、政権獲得後のビジョンが把握でき、与党の代わりとなる選択肢になり得ると共に与党の実際の政治と以降の方針であるマニュフェスト等との対比にもなることから、日本の様にマニュフェストが抽象的で余り守られないことと比較すると機能の充実度がかなり高いといえます。
選択肢がなかったり、対比がしにくい状態では、当然投票率も下がり、日本の地方の首長を決める選挙では、相乗りの候補と共産党の候補の二択しかないことが常態化して、投票率も20%台とかなり低率になることもあります。
投票率が下がると一部の利権団体の影響力が大きくなり、正当な評価がされにくくなるという悪循環に陥ります。