『ワーク・ルールズ!(Google人事制度)』を読んで

記事の目次

①戦後日本における年功序列制度

戦後日本において、長きに渡り、年功序列制度導入されてきました。

年功序列が日本経済を支えてきたといっても過言ではありません。

勤続年数や年齢は、その人の能力を測るわかりやすい指標でもあり、長く勤務していたり年を重ねていったりすれば、自ずと経験やスキルは蓄積されていきます。

その結果、会社に対する貢献度も高くなると見込まれるため、そうした前提に立って勤続年数の長い年長者を優遇するというのが年功序列の本義です。

ある意味客観的評価システムの一種ともいえます。

しかし、裏を返せば成果を上げなくても年数や年齢で好待遇の身分を勝ち取れるということを意味し、実力はあっても若年者や勤続年数の短い人は、組織の序列のなかでは下の位置に組み込まれます。

そして、若手の人材が成果主義の企業や海外へ流出してしまうことにも繋がります。

また、年功序列における人事評価の対象は、勤続年数や年齢などが主です。成果に関してはそこまで重視されないだけに、社員のなかには成果を第一としない思考を持つ者も出てきてしまいます。ただ勤続年数や年齢を積み上げるだけで、成果を上げようという意欲が低下してしまえば、会社の業績にとっても良くない影響を及ぼしかねません。成果を評価基準にしない年功序列の仕組みでは、リスクを取ってまで大きな施策にチャレンジする必要がなく、企業や人材の成長性はどうしても薄れてしまいがちです

よって、余り、質の高い客観的評価システムとはとても言えません。

ただ、対比する欧米で主流の成果主義の制度が客観的評価システムという観点で見て、より質の低いレベルである状態の時代では、この年功序列制度は日本の経済を押し上げていく原動力ともなりました。

勤続年数や年齢以外の部分で人材を評価するのは簡単ではありません。評価が主観的なものに傾き、成果主義 が逆効果になってしまうことも多々あります。

その中では、年功序列における人事評価は評価が単純・簡単であり、少なくとも、ある程度の客観的評価システム的プラスの役割を果たすことができます。

きつくいってしまうとつまり、ないよりはましということですが・・・

それでも上手く機能せずに、一部の上司などの主観性によりマイナス的作用をしてしまうリスクが多く含まれるようなレベルにある成果主義よりは相対的に見るとかなり優れた制度とも言え、実際的に20世紀末期まではそのような状態の時代が続きました。

②成果主義における客観性の向上

しかし、クリントン政権下でNPR 、国家業績評価という結果的客観的評価システムの一種を導入して、国家改造を行う過程において(詳しくは、⑽アメリカの近現代史を客観的評価システムの観点から考察の⑤米英の共通点に書かれています。)、ベンチャー企業支援や IT 産業発展の環境整備がされ、そして IT 革命に代表される技術革新の進展により、さまざまなベンチャー企業が大きく成長し、アメリカ経済の体質が変わり、強いアメリカ経済が復活したという認識の下、ニューエコノミーという時代に入りると、成果主義の制度でも客観的評価システムという観点で優れたシステムを導入する企業が続発していきます。

結果的客観的評価システムの下、生まれた企業のためその傾向を示すのは、当然といえば当然かもしれません。

その代表的な企業がこの『ワーク・ルールズ!』で書かれている人事制度を採用しているGoogleです。

普通の会社であれば業績評価は上司のマネージャーが行いますが、Googleの業績評価は客観的な指標を持つために複数のマネージャーが合同に行います。

Googleではマネージャーと部下が仕事について発展的な対話をすることが求められています。

発展的な対話によって部下がマネージャーの心象を害すこともあるでしょう。

もしもGoogleの業績評価が客観的な評価ではなく、上司だけの評価であれば、上司への悪い印象は給料直結してしまいます。部下は上司に発言することを恐れることでしょう。

「発展的な対話が業績とは関係がない」と示すためにも、Googleでは、業績評価を複数のマネージャー合同で行います。

つまり、マイナス的一部の上司の主観性を排し、客観性を発展的な対話によってさらに高める努力がされているということです。

これらの企業の登場により、日本は失われた20年といわれる低成長期に入ります。

その主たる原因はバブル崩壊というよりも、客観的評価システムという観点における年功序列制度の相対的価値の低下にあるといえます。

その証拠に、日本の企業の中でも少数ですが、客観的評価システムという観点において優れた人事制度を採用し、大きく成功している企業もあります。

その代表的な企業がキーエンスです。

日本が誇る超優良企業といえば、その筆頭に挙がるのはキーエンスです。

工場の自動化に不可欠なセンサー機器や画像処理機器などの開発から販売までを手がける。一般消費者との接点がないBtoBビジネスのため、知名度はそれほど高くありませんが、順調に成長を遂げ、日本の株価総額では3位or4位になります。

給与のランキングでも常に最上位に位置しています。

キーエンスでは、基本給を基準とした賞与とは別に、連結営業利益の一定割合を社員に支給する業績連動賞与の制度があることも、年収が高い理由です。

「業績連動型賞与制度」は、業績に対する従業員意識の向上、業績に応じた人件費の適正化、賞与決定プロセスの明確化・透明化などを目的として、導入されてます。

予め定められたルールや算定式に基づき、成果に応じて賞与が得られるので従業員にとってはわかりやすく、納得しやすい制度でしょう。そもそも、個人の成績だけでなく、会社全体の業績によるものが大きいので、経営参画意識を高める効果もあり、導入している企業も多くあります。

しかし、特筆すべきことはその度合と額です。
営業利益の10%が新卒社員を含む全社員に業績賞与として社員に還元され、分配されます(社員の頭数で割る)。

賞与だけで一千万円以上となる時も数多くあります。

これは正にシンガポールの官僚の給与と GDP と連動している結果的客観的評価システム(詳しくはこちら)と極めて類似しています。

 

また、後々、出世した人の共通点を探って採用活動に活かすために、採用面接でのやりとりの映像が録画され、分析対象になります。

この採用面接のフィードバックの大切さについては『ワーク・ルールズ!』の「第5章直観を信じてはいけない」でGoogleでも重視されていることが詳しく述べられています。

 

企業、国どんな組織においても客観的評価システムの観点における質の高さの必要性の重要度がこの『ワーク・ルールズ!』を読んでさらに実感しました!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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