条件的客観的評価システムとは、社会の利益を生み出すであろう知識経験などを評価するもので、選抜試験、資格試験などがこれにあたりごく普及されている一般的なものではありますが、あくまで社会の利益を生み出すであろうという予測でしかありません。

条件的客観的評価システムには1⃣第1段階目つまり歩的、原始的なものに科挙があります。

次に、科挙に影響を強く受けた西欧諸国がより社会の利益に沿った評価システムとして作り上げたのが2⃣第2段階目になるプロイセン・ドイツから導入された官僚を採用するためのメリットシステムとそれらを裏付けする学歴があります。

そして、それら以上に社会の利益に即した形での3⃣第3段階目になるドイツ・スイスのマイスター制度などを起源としたデンマークなどの全職業に網羅された職業訓練教育制度に裏打ちされた資格・技量認定制度などがあります。

1⃣2⃣3⃣に進む程、質が高いものとなります。)

第2段階目の条件的客観的評価システムであるメリットシステムが第1段階目の条件的客観的評価システムである科挙を起源とするのに対して第3段階目の条件的客観的評価システムは中世ドイツの同業者組合による徒弟制度を起源とします。

ドイツにおいて徒弟制度を起源とするマイスター制度は従来の手工業だけでなく、戦後においては工業マイスター制度も正式に発足させ、充実した職業訓練制度の下、評価システムによって高スキルの労働者を育成しています。

ドイツマイスター制度の枠組み

手工業マイスター(一例)
94業種(開業にマイスター資格が必要な業種は41)
製パン / 食肉加工 / ビール醸造 / 整形靴 / 義肢装具 / 木工家具

工業マイスター(一例)
300 種類以上(企業に勤めることが多い)
電気設備士 / 情報技術者 / 金属加工 / 自動車整備士/ 産業系商業職 / 産業機械工

グレードが職種ごとに決まっており、独立開業もしくは会社就職してからも生涯学習の中で職能のグレードを上げていき、最終的にマイスターを目指します。

これらの各地方に広範囲に育成された熟練した技術者がミッテルスタンドと呼ばれる技術水準の高い中小企業を形成しています。

ミッテルスタンドは大半はものづくり企業であり、ドイツ経済のエンジンとも言われ、ユーロ経済圏を牽引する世界一の黒字国であるドイツの稼ぎ出す貿易黒字の七割を占め、ドイツ経済を文字通り支えています。

ニッチ分野で世界をリードする技術と品質を 培い、高付加価値製品の国内生産維持して、充実した対外経済の国家的支援もあって、グローバル市場での存在感を高めて行き、大企業の下請けではなく、自立・独立したビジネスモデルを堅持してます。

 

同様な制度が同じドイツ語圏のスイスにもあります。

スイスではあらゆる職業でライセンスを持っていることが義務付けられています。(デンマークも)➡reading⑸『世界一幸福な国デンマークの暮らし方』を読んでを参照して下さい。

ライセンス所有者は職種による最低賃金が保証され(デンマークも)、経験によって収入が増えていきます。

職業教育を終え、専門職のライセンスを得て、さらに5年以上の実務経験を積み、マイスター試験に合格するとマイスターになります。

スイスは世界で最も国際競争力が高い国の一つ(デンマークも)で、市民の生活満足度が高く、世界幸福地図では第2位デンマークが1位)です。

ちなみに生涯学習の度合もデンマーク、スイスがそれぞれ1位、2位となっています。

公平に評価するシステムがあるからこそ、ミクロ的個々に学び向上するインセンティブが生まれ、ひいてはマクロ的社会、国全体的にも向上・発展し、そしてミクロ的個々の個々の幸福に繋がるという良循環になるということですね。

 

しかし、条件的客観的評価システムには第3段階目だろうが、全てにおいて結果的客観的評価システムのコントロールが働かない状態で制度が一度定着すると、それによって創られた組織が固定的に硬直化し、公益に反してグループ主義に特化してしまう性質があります。

そのことについてはまた詳しくこちらで述べていきます。

 

 

 

 

 

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