今の日本においては、景気の回復が見込まれない為、利上げが出来ず、急激な円安、悪いインフレの恐れが取り沙汰されています。
この状態下で参議院選挙を迎え、与党は賃上げ、野党は減税を訴えています。
しかし、過去の政権の試行錯誤を見ても、上記政策が効果的に作用するとは残念ながらとても思えません。ではどうすれば日本の景気は良くなるのでしょうか?
その解決策を探るために他国の歴史をみてみましょう。
英国や米国においても、失われた30年といわれている現在進行形の日本のように長期の経済的停滞・不景気に苛まれていた時期がありました。
英国においては先進国中一人当たりの GDP が最下位まで落ち込んでしまった1960年代から1980年代にかけての英国病であり、アメリカにおいては1970年代から1980年代にかけての双子の赤字、スタグルレーションの時期です。
両国ともこれらの問題を解決できるきっかけとなったのが結果的客観的評価システム(詳しくはこちらをクリック)です。
英国ではメジャー政権から数値指標による業績管理という結果的客観的評価システムの導入がなされて行きます。
政策立案以外の執行部門の委託を受けたエージェンシーに対して、契約した結果が出なければ賠償責任を負わせ、出れば結果に合わせて報酬を与える結果的客観的評価システムです。
これによって、先進国中一人当たり GDP が最下位であったイギリスは、過去最長期間における安定成長を続け、上位に返り咲くことになります。
アメリカのクリントン政権では、それまでの共和党政権の小さな政府を指向することでもなく、ニューディール以降の民主党の伝統的なケインズ政策を実施したわけでもありません 。
NPR 、国家業績評価という結果的客観的評価システムの一種を導入して、国家改造を行う過程において様々な政策、財政出動をして行きます。
比較的大きな政府の中、政府が民間の経済活動に積極的に関わり、雇用の創出をしていくという点では伝統的なケインズ政策とはほぼ変わりません。
しかし、そこに結果的客観的評価システムを直接効かせるか、そうでないかによって両者は大きく異なっています 。
NPR によって行政職員の意識は大きく変化し、目的を明確にし、業績測定などにより、インセンティブと行うサービスに対する説明責任を持ち、自発的な行動が見られるようになります。
その実施過程の中、ベンチャー企業支援や IT 産業発展の環境整備、次世代自動車開発などに補助金や軍が蓄積してきたハイテク技術を投入するなど、民間の経済活動への政府の介入に慎重だった共和党政権に対して、クリントン政権は政府の産業介入を鮮明にし、自由放任主義の方向性を大きく方向転換しながら、昔ながらのケインズ政策のように需要増加ありきのものではなく、明確な目的の下、実効性・効率性を重視した政策を進めて行きます。
その結果、アメリカ経済はアメリカ史上最長の景気拡大・株価上昇を記録し、失業率もインフレ率も低下し、30年近く続いていた政府の財政赤字もクリントン政権末期には解消されました。
ジャーナリズムはこの繁栄の下のアメリカ経済をニューエコノミーと名付けます。
この言葉はベトナム戦争以降の長い経済・社会の停滞・低迷を脱し、自信を取り戻した人々の心に刻まれました。
その背景には IT 革命に代表される技術革新の進展により、アメリカ経済の体質が変わり、強いアメリカ経済が復活したという認識にありました。
このレーガン、ブッシュ政権における小さな政府・自由放任主義的政策が失敗に終わり、クリントン政権における結果的客観的評価システムの一種を行政の業績に直接作用させる政策が効用し、アメリカ経済が奇跡の復活を成し遂げた現象は、正にイギリスが英国病を脱する過程における 現象と共通します。
小さな政府・自由放任主義のサッチャー政権下では英国病からは脱することができなかった中で、結果的客観的評価システムの一種を作用させたメジャー、ブレア政権下では、歴史上最も長い期間における安定成長を続け、先進国中一人当たりの GDP が最下位であったイギリスは上位に返り咲き、英国病を脱出することに成功している流れが、アメリカにおけるものと非常に類似しています。
失われた30年といわれている現在進行形の長期の経済的停滞・不景気に苛まれている日本においても、この客観的評価システムという視点が必要不可欠ではないでしょうか?
実際的にこの失われた30年間にも、日本において急成長していき、株価総額が日本で4位まで上り詰めたキーエンスでは、このコロナ危機でもほとんど株価が下がらず、平均給与も日本一位(もしくは最上位レベル)にありますが、客観的評価システムという観点において優れた人事制度を採用し、大きく成功している企業でもあります。
工場の自動化に不可欠なセンサー機器や画像処理機器などの開発から販売までを手がける。一般消費者との接点がないBtoBビジネスのため、知名度はそれほど高くありませんが、順調に成長を遂げています。
キーエンスでは、基本給を基準とした賞与とは別に、連結営業利益の一定割合を社員に支給する業績連動賞与の制度があることも、年収が高い理由です。
「業績連動型賞与制度」は、業績に対する従業員意識の向上、業績に応じた人件費の適正化、賞与決定プロセスの明確化・透明化などを目的として、導入されてます。
予め定められたルールや算定式に基づき、成果に応じて賞与が得られるので従業員にとってはわかりやすく、納得しやすい制度でしょう。そもそも、個人の成績だけでなく、会社全体の業績によるものが大きいので、経営参画意識を高める効果もあり、導入している企業も多くあります。
しかし、特筆すべきことはその度合と額です。
営業利益の10%が新卒社員を含む全社員に業績賞与として社員に還元され、分配されます(社員の頭数で割る)。
賞与だけで一千万円以上となる時も数多くあります。
これは正にシンガポールの官僚の給与と GDP と連動している結果的客観的評価システム(詳しくはこちら)と極めて類似しています。