公共善を指向する人々は、自分達の時間・努力、場合によっては財力やリスクを掛けて、それを成さしめようとします。

それに対して、グループ主義を指向する人々は、自分達の利益と直結しやすい癒着・利権の構築に同じ様に、時間・労力等を費やします。

個と公(おおやけ)をリンクさせるシステムが特別なければ、自然の流れで前者は後者に駆逐されます。

前者の行動は後者に比べて、自分達の利益に直結していないからです。

特に、公共善のために既得権益を相手に改革を志す者は、更にその度合が激しくなります。

集団欲というのは、外部の敵に対しては凄まじい結束力を持って攻撃性を放つからです。

公共善のために尽くす社会利益主義者や改革者は、個と公(おおやけ)を直結するリンクによって優遇・保護するシステムがないと自然の流れで迫害され、除外される傾向が極めて高くなります。

 

共和制ローマ初期には重装歩兵としてローマの防衛に大きく寄与していた平民の発言権の向上から、民会の決定が元老院の承認を得ずにローマの国法になったり、平民の権利を擁護する護民官が設置されることなどにより、グループ主義的な貴族階級の権限の制限が、平民と貴族との身分闘争の中で進行している間は、共和政ローマは拡大・繁栄していきます。

しかし、拡大するに従って、属州に利権を得ることにより元老院などの貴族階級の力が増大していきます。

共和政ローマの政治系体は貴族制と民主制の中間系体的なものでした。

世襲的な元老院、パトロヌス(庇護者)・クリエンテス(被庇護者)の癒着関係などグループ主義的な要素を多く含んでいました。

ポエニ戦争後、属州が増えてからは、特にそれに拍車がかかります。

貴族化、利権化した総督職は収奪が主な役割となり、凄まじい収奪から、属州になった地域の多くで数十年後には人口を1/10ほどに減少するような事態も起こってしまいました。

従属した都市の有力者はローマの政治家に多額の付け届けを欠かさぬことを重要な政策とし、少数の有力政治家の収入と財産が国家財政に勝る重要性を持ち、ローマの公共事業は有力政治家の私費に依存するようになりました。

ローマ市民はこうした巨富の流出に預かる代償として、共和制ローマの政治家に欠かせない政治支持を与える形で有力者の庇護下に入り、癒着 の強固な関係が築かれていきます。

また、搾取的収穫により得た属州からの安い農作物の流入により、兵役に疲労した自由農民をさらに窮地に追いやっていきます。

ローマ軍の中核を成し、ローマを支え続けてきた自由農民の没落を救うために農地法を制定させようと、改革を志した平民派で護民官のグラックス兄弟が貴族階級により命を落とすと、ローマは、崩壊の危機に直面する内乱の一世紀に入ります。

当時の、国際法や国連などが当然ない中では公益の最たるものは防衛軍事であり、それらを支えた重装歩兵の主力となった自由農民である平民が拡大戦争によって、権限が増大するのではなく、逆に没落したことによりローマは内乱の一世紀という対立・紛争が入り乱れる逆境に立たされます。

 ローマの防衛や拡大に貢献した自由農民や平民が逆に没落した共和制末期に比べて、帝制期に近づく頃には、カエサルがグラックス兄弟が挫折した農地法を成立させ、元老院の権限を制限し、アウグストゥスが補助兵を25年勤めた者や水道工事・建物の建設に携わる専門家集団に市民権などの特権を与えるなど皇帝が個と公(おおやけ)をリンクさせる役割を持つようになります。

集団よりも大きな単位である社会・公(おおやけ)・国家が繁栄するためには、個と集団間がリンクしたグループ主義から来る対立・紛争を防止する個と公益または集団と公益をリンクしたシステムを構築することにあると言えます。

それをしなければ、自然な流れとして、個は自らの利のために集団とのリンクを集団欲の赴くままに強めることに集中してしまいます。

公益を第一に志す者が出てきたとしても、集団によって個の力を増大させた者には、個の力によっても、数の論理によっても伍することは難しくなります。

公益を主とする者を社会利益主義者、公(おおやけ)よりも集団を重視する者をグループ主義者とすると、良貨は悪貨を駆逐するように、前者は後者に追いやられてしまい、少数派になるか、または本音と建前の使い分けで本音が後者、建前は前者の二面性の強い社会になってしまう傾向になります 。

 

そのグループ主義的な混乱を収拾し、ローマに一体化した紐帯を与えたのは帝制の基礎を作ったアウグストゥスによるローマ市民権を報酬とする結果的客観的評価システムでした。

客観的評価システムが国家と個のリンクを構築し、国家を繁栄に導きました。

『悪貨(グループ主義)が良貨(公益主義)を駆逐する』という集団欲が導くために起こる自然の流れを変えるにはこの国や社会などの公(おおやけ)と個のリンクを構築する客観的評価システム(詳しくはこちら)が極めて有効であることは歴史が物語ってくれています。

 

 

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