中国と日本は政治形態・民族性など、一見すると全く異なります。

しかし、経済発展と沈滞・衰退という観点においては、大きな共通点があります。

それは既存の不公平な特権階級・既得権益の一掃された環境状態を出発点とする、条件的客観的評価システムを主とする急激な成長とその条件的客観的評価システムを補完すべき結果的客観的評価システムが不十分であるために沈滞・衰退していく一連の流れです。

日本は戦後の民主改革(財閥解体・農地改革など)によって、既存の不公平な特権階級・既得権益の多くが撤廃・一掃されました。

そして、しばらくは、条件的客観的評価システムであるメリットシステムと密接に結びついている学歴の頂点にある東大の合格者の家庭の年収が平均年収より低い状態が持続しました。

歴史的に見て、後天的な差が出るのが健全で社会が発展し、先天的な差が出るのが不健全で機会の平等が成立していない証拠といえます。

アメリカの経済をリードするベンチャー企業のトップの多くはハングリー精神が旺盛な移民一世か二世であることを見ても、機械の平等つまり、公平性がしっかり担保されていれば、必然的に平均的には、低年収の家庭から成功者が出ることが多くなるといえます。

つまり、当時の日本は発展性という点で健全性がある程度確保されていたということです。

しかし、条件的客観的評価システムの欠点として、条件的客観的評価システムを補完すべき結果的客観的評価システムが不十分である時は、条件的客観的評価システムによって構築された権益グループによってそのシステムが劣化・陳腐化される特性があります。(詳しくはこちらをクリック)

実際的に、日本における条件的客観的評価システムにおいても2段から3段階目に発展するどころか、2段階目に停滞しながら、その2段階目にしても(時が経るに連れて)客観性よりも主観性が重視される推薦入試が徐々に幅を利かしつつあり、東大の合格者の家庭の年収にしても、現在でははるかに高い世帯年収となっています。

その結果として、現在の日本の失われた30年という沈滞・衰退が生み出されています。

中国においても辛亥革命や国民党・共産党の内戦などを経て既得権益が一掃された中で、条件的客観的評価システムである共青団組織下のエリート選抜(官僚登用)システムによって、急激な経済発展を成し遂げて行きました。

しかし、条件的客観的評価システムを補完すべき結果的客観的評価システムが不十分であるという点では中国ははるかに日本に劣ります。

よって、その沈滞・衰退も急激に進んでいます。

発展の原動力となった地方の貧困家庭から勤勉・努力を武器に実力主義でエリート選抜システムを担った共青団派が没落し、共産党政権幹部の子弟を中心としたコネ・繋がりを武器とした太子党が幅を利かせ、その出身である習近平が全権を掌握しつつあるのもその流れだと思います。

では、その様な流れを変えて行くにはどうしたらいいのでしょうか?

条件的客観的評価システムを補完すべき結果的客観的評価システムが不十分である状態で、一度条件的客観的評価システムによって構築された権益グループが牛耳ってしまうとそれを内政的に覆すことは(歴史的に見ると)非常に困難になります。

ただ困難といっても不可能ではないはずです。(恐らくは・・)

とりあえずは国別に対策を考察していきます。

先ず日本において見て行きます。

なんにせよ結果的客観的評価システムの構築の充実性を追及していくしかないわけです。

結果的客観的評価システムには大きく分けて、民主主義から派生する結果的客観的評価システム(詳しくはこちらをクリック)とそれ以外のものに分けることができます。

それ以外には、小国ながら世界最先進国となっている現代のシンガポールにおける官僚などの賞与と GDP 成長率とを連動させる制度(詳しくはこちらをクリック)や英国病から脱出させた現代のイギリスにおける数値指標により業績評価・報酬をするエージェンシー制度(詳しくはこちらをクリック)などがあります。

では、先ず民主主義から派生する結果的客観的評価システムから見て行きますが、北欧のように比較的整備された状態にもっていくことは、民族性・宗教性、そして何より既に条件的客観的評価システムによって構築された権益グループ(官僚を中心とした政官財のトライアングル)が網の目のように網羅し、牛耳っている状態ではそれらを排して、民主主義から派生する結果的客観的評価システムを正常な方向性に進めて行くことは、歴史的に見ると内政的にはは非常に困難な現実があります。

20世紀末期に構築された経世会のほぼ全産業分野におけるパイプライン(その合間を抜いて利権を文教族的に構築した清和会が今統一教会問題で話題になっていますが・・・)などによって、どの分野の職業の人もほぼ何らかの形で既得権益と濃淡はあるにせよ関与している状況がつくられています。

これを無視して、癒着・既得権益にがんじがらめになっている社会で正論を述べても自分だけでなく、自分の周囲を含めた人々さえも不幸に陥らせるリスクが高くなります。

となると現実的に手を付けれる対象となるのは、それ以外のものつまり、民主主義から派生する結果的客観的評価システム以外の結果的客観的評価システムになります。

これには、シンガポールにおける官僚などの賞与と GDP 成長率とを連動させる制度、イギリスにおける数値指標により業績評価・報酬をするエージェンシー制度などがありますが、要は結果にコミットして官僚や公務員に報酬を与えるというものです。

既得権益の中核サイドにプラスとなる要素を多々含んでいますので、これは運用次第では十分可能性があるように思えます。

世論・国民感情に対しては、負の評価システムとなっている天下り制度の根絶とセットに進めて行けばOK❕のような気がします。(甘いかな・・・)

詳細な考察・追及は後でしていくとして、取り敢えずの方向性が決まった所で、いったん日本から中国に視点を換えます。

中国においては、日本以上に(かなりはるかに)条件的客観的評価システムによって構築された権益グループにがんじがらめになっており、これを排除して民主主義から派生する結果的客観的評価システムを構築していくことははぼ不可能な状態となっています。(よほどの混乱、大規模な国家的経済的破綻、クーデターなどがない限り・・・)

よって中国においても日本と同じように民主主義から派生する結果的客観的評価システム以外の結果的客観的評価システムを中心に考察していきます。

実は中国においては、既に民主主義から派生する結果的客観的評価システム以外の結果的客観的評価システムを導入しています。

具体的に言うと、シンガポールをまねて官僚などの賞与と GDP 成長率とを連動させる制度を導入しているのです。

しかし、これがシンガポールと違い完全に逆効果になってしまっているのです。

シンガポール特有の客観的評価システムとして挙げられる、結果的客観的評価システムの一つである公務員給与が GDP と連動しているシステムを見て行きます

世界恐慌になった21世紀初頭のリーマンショック時には、 GDP が急落したために公務員給与が大幅に減額され、大統領・首相・閣僚レベル・官僚のトップ・国会議員なども2割近く削減されました。

逆に前年比で15%ほど  GDP が増加した年には、上級公務員には8ヶ月分の GDP ボーナスが支給されました。

民間企業の業績とGDP が伸びた時は高い給料が支給され、下がれば支給される給料が減額されます。

そのため、シンガポールの官僚は民間企業の業績を上げ 、GDP を伸ばすために必死になります

他国と比較する官僚は非常に高い給料が与えられ、30代前半で2000万以上の給料を手にし、40代半ばでは1億円を超える者もあり、このことがシステムを十分に機能させることに大きく寄与して行きます。

同じシステムをシンガポールを真似て導入した中国においては、官僚の給料極めて低いため、客観的評価システムの方向性よりも、得る利益が莫大な不正による利益追求の方向性に流れてしまい、機能不全どころか、不動産バブルゴーストタウンの出現環境破壊などプラスの作用よりもマイナスの作用の方が大きく、逆効果になってしまったのとは対照的と言えます。

また、シンガポールは国全体の指標を軸にしているのに対して、中国は地方別のGDPなどを指標としているため、さらに地方間の無理な開発(派閥争いも相まって)を助長し、マイナスの作用を大きくしてしまった感があります。

また、シンガポールの公務員給与が GDP と連動しているシステムと同種である英国病からイギリスを脱出させた数値指標により業績評価・報酬をするエージェンシー制度(政策立案以外の執行部門の委託を受けたエージェンシーに対して、契約した結果が出なければ賠償責任を負わせ、出れば結果に合わせて報酬を与える結果的客観的評価システム)にしても、これにより先進国中一人当たり GDP が最下位であったイギリスは、過去最長期間における安定成長を続け、上位に返り咲くことになりますが公共セクターの報酬民間セクターに比べて、上層の職務ほど低くなっており、シンガポールなどと比較して、インセンティブが低く優秀な人材が民間に流れたり、もしくは便宜供与を目的とする民間からの転入などもしばしば見られました。

似たような現象はエージェンシー制度をこれまた真似て構築されたアメリカのNPR 、国家業績評価という結果的客観的評価システムにおいても同じ様な現象が見られます。詳しくはこちらをクリック

この種の結果的客観的評価システムに大事なことは、官僚の待遇面・身分保障をしっかりするということです!(民間の利益供与に引っ張られないために)

また、ドイツのように、各自政党会派に属させ、政党の得票率に比例して高級官史が割り当てられるようにするとともに、一時休職制度を取り入れ、職業上級公務員を強固な身分保障、生涯保障の下採用し続けることにすれば、回転ドアなどにより癒着が形成するグループ主義が、民主主義から派生する結果的客観的評価システムを阻害することを防止できるとともに民主主義から派生する結果的客観的評価システムの機能度も高めれるという一石二鳥の効果を望めます

つまり、ドイツでは政党と官僚組織が解離しないように、大部分の職員は政党会派に属し幹部職員は政党の得票率に比例して割り当てられて行き、政権交代時には政治的官史の約半数が一時休職して行きますが、休職している官僚は野党が第一党に なっている州政府高官や大学教官などに就き、野党側の政策を作るリソースになって行きます。

言わば、アメリカの猟官制度における欠点である財界など民間との癒着を大半を職業公務員を採用し続けることにより防ぎ長所である政策実施を直接担う高級官僚を大幅に交代させることによって大きな改革可能とする点も含む、アメリカ官僚制の改良版とも言えるものになります。

身分保障が強固で生涯保障が優遇されているために、天下りなどの癒着もほとんどなく民主主義から派生する結果的客観的評価システムの機能度合がアップするという諦めてた民主主義から派生する結果的客観的評価システムの充実を図れるという棚から牡丹餅効果を見込めます!

勿論、これは日本に限ったことで今の中国ではまず無理ですが・・・

これは権限サイドにある官僚グループによってプラスになる要素を多々含みますので、運用次第では十分可能性があるように思えます❣(甘いかな・・・)

具体的な官僚に対する優遇制度(詳しくはこちらをクリック)や官僚が最も優遇されるべき訳(詳しくはこちらをクリック)についてはそれぞれクリックしてくださいね❕(ちなみにわたくしめは官僚でも公務員経験者でもありません・・・)

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